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酷道

【関連項目】 険道


酷道

上 : 国道477号、京都市内。  (Wikipediaから)
下 : 国道308号、東大阪市内。(Wikipediaから)

こくどう 2011/09/08更新

 酷道とは、日本の国道のうち、国道であることを思わず疑ってしまうような規格の低い道路を指すスラング。

 そのレアさやギャップ故に、道路ヲタ・地理ヲタの聖地のひとつになっている。 なお、スラング発祥ながら、1960年代の国会において数度の使用例があるらしい。 県道の場合は「険道」と呼ばれる。

概説

 各地に高速道路なみのバイパス道路が次々完成している21世紀のこのご時世、「国道」というならせめてアスファルト舗装の片側一車線くらい、あるいは原付で買い物に行くにも困らないくらいの道であってほしいものである。 しかし、狭い日本もまだまだ広い。 軽自動車でもやっとの幅しかなかったり、とんでもない急坂が連続したり、果ては未舗装だったりする道路がいくらもある。 それどころか階段だったり登山道だったりと、車で行けない場所すらある。 いずれにせよ、気軽に行ってしまうと大変な目に遭う国道が存在する(階段に関しては逆に階段としてきれいに整備されて観光地になっていたりする)。
 これらの整備が行き届いていない国道について「酷」の字をひっかけて総称したのが「酷道」である。 鉄道の「秘境駅」に通ずるものがある。 

 具体的に酷道の要素を上げると、
・ 基本的に山深い奥地で人家も稀
・ 急坂がいくつもある : 古い道路は長距離トンネルや高架橋を掘る技術力がなく、その道がそのまま残っている
・ 待避所以外でのすれ違い(離合)が困難 : 山深く交通量も少ないので拡幅するだけの必要がない
・ ガードレールがなくなってからが本番 : 金かけて設置するだけの交通量がなかったり、災害で破壊されたままだったり
・ 落石箇所は路肩崩壊箇所が存在する : 交通量が少なく予算が少ない上に災害に遭う箇所が多く、予算が足りない
・ 時間帯通行止区間がある : 狭いor重量の問題で、工事を行う際は工事車両以外の通行が危険のため通行止にする
・ 都市部において、古い街区の中を通る路地のような区間 : 都市部のため拡幅が困難
・ 接続する県道などの方がよほど高規格 : そうなってしまうとなおさら改良の必要がなくなる
・ 交差点で直進すると県道や市道で、曲がる狭い道が酷道
などがある。
 このほか、国道としておおまかなルートが指定されているものの、車道が未開通のために代わりに登山道が国道に指定されている、いわゆる「点線国道」がいくつかある(例えば、国道401号は尾瀬を通るため、尾瀬付近は木道で歩けるのみとなっている)。

 ただしこのような道であっても、元々国道は何らかの意味や重要性がある地点を結ぶ形で設定されたものであるため、完成後の交通量が見込める場合にはごくゆっくりであってもバイパス整備が進められる場合がある。 特に登山道が国道指定されている場所などはこれまでは技術的財政的困難のために酷道になっていた場合があり、近年になってようやく長距離トンネルの掘削などにより解消されることもある。 例えば埼玉県と山梨県を唯一直結する国道140号雁坂トンネル(1998年に開通・それまでは登山道)、福島県中通りの白河市と会津地方の下郷町を結ぶ国道289号甲子道路(2008年に開通・それまでは登山道)などで、意外に多い。

 車載動画には酷道を撮影したものもあり、またネット上には酷道マニアのサイトが古くから多くある。 冒険心や好奇心をくすぐるためだろうか。

有名酷道

通称「日本三大酷道」

 誰が言い出したか不明だが、418号、425号、439号は日本三大酷道と呼ばれることがある。

中部 418号  福井県から岐阜県に抜け、さらに東へ進んで長野県に抜ける道。
 福井県〜岐阜県で越える温見峠(157号と重複)付近は路面が極端に悪いだけでなく、川が道路上を流れる「洗い越し」がある。
 さらに、八百津町〜恵那市間は落石が多発する上に樹木が生い茂り、山に還りつつある状況で、当然に通行止め。 現在新しくダムが建設中(あわせてバイパスも建設中)のため、整備もされず廃道状態の模様。
 こんな道でも国道なのは、木曽川沿いに中仙道の脇往還であったためらしい。
近畿 425号  紀伊半島の三重県尾鷲市から奈良県南部の秘境を通過し和歌山県御坊市までを、東西に結ぶ道。 直線では100km程度なのに路線長は200km弱で、尾鷲と御坊との間を通行するなら海岸沿いにぐるっと200kmほど走る国道42号線の方が圧倒的に早くて楽。
 和歌山・奈良県境の牛廻山付近を越える「牛廻越」がハイライト。 
四国 439号  徳島市から西に山へと分け入り、高知県に入った後は高知市のような都会は迂回して山の中を四万十川河口に至る道。 剣山の山頂近くを通過する他、東西に伸びる四国山地の只中を同じように東西に走るので峠も多い。 いくつかの四国を縦断する国道との交点付近以外は全て山、しかも整備が悪いと悪路中の悪路と言った様相。

 

その他の有名な酷道の例

東北 289号  先述の甲子道路の開通以前、登山道区間の東側入口では旅館の渡り廊下をくぐっていた。 また、旅館から少し進んだ登山道には歪んだ木の柱に国道標識(「おにぎり」)があり、これは登山道では全国唯一と言われていたが、甲子道路開通に伴って登山道が国道から外れた際に撤去された。 オークションで売ったら高額落札間違いなし。
 甲子道路は開通したが、まだ福島・新潟県境は点線国道のまま。 この峠は「8里の距離ながら80里もあるように感じる」というところから「八十里越え」と言われているそうで、名前から建設の困難さが伺える。
関東
甲信越
140号  秩父〜塩山間の雁坂峠越えは日本武尊が通ったとも言われるが、かつては登山道が指定される「点線国道」で車の行き来は不可能だった。 この区間に1998年に雁坂トンネルが開通する以前は山中で便所の中を登山道である国道が通過するという「便所国道」が有名だった。
 登山道部分は雁坂トンネルの完成で解消されたものの、そのすぐ東側の秩父湖に沿った区間はバイパス完成後も旧道が国道指定されたまま残されている。 この秩父湖沿いの旧道にあるトンネルは狭いために離合困難で信号機による交互通行が行われ、しかもトンネル内で県道がY字分岐(Y字のため秩父側と県道は行き来できるが甲府側と県道は行き来できない)するという酷道が残存している。
関東
甲信越
291号  群馬県前橋市から谷川岳を越えて新潟県柏崎市に至る道路。 谷川岳越えの区間は西の三国峠へと迂回する国道17号に対し直線の清水峠ルートを採ったもので、鉄道や高速道路はこのルートの遙か地下を通過している。
 この区間は20kmに渡り車道が未開通。 このうち、群馬県側は登山道が指定されているが、この登山道は明治初期に建設された車道が放棄された跡を使い続けているため、徒歩通行が十分可能。 しかし、新潟県側は災害で崩壊した後に別ルートが登山道として使用されるようになったことで、指定されている登山道は登山道としても完全に廃道と化し、徒歩通行すら不可能になっている。
近畿 308号  大阪市と奈良市を生駒山地の上を越えて東西に結ぶ道路。 平城京時代に難波とを直線で結ぶ街道が起源で、現在は鉄道や有料道路が生駒山地の下を貫いておりルート自体の需要は現代まで踏襲されている。 また、山越え区間以外は整備された所も多い。
 しかし、この道路の山越え区間は1300年間あまり変わっておらず、奈良県側では街中の狭い路地のような道を突き進み、大阪府側では生駒山登坂のためにかなりの急勾配が連続。 ハイライトの生駒山上の峠は「暗(くらがり)峠」という名で、名称が既に酷い。
 ただし、大都市圏内にあるだけあり、ハイカーは多い。
近畿 309号  奈良県南部は世界遺産になるくらい奥が深い(山深さという意味で)。 309号線のハイライトは「行者還トンネル」。 役行者すら諦めた行者還岳付近はもちろん冬季通行止め。
近畿 477号  三重県四日市市から滋賀県・京都府を通って大阪府北部池田市に到達する道。
 おおまかなルート自体は四日市から池田市の真北に至るまでずっと西進、そこからまっすぐ南下するという分かりやすいものだが、実態は琵琶湖大橋を除いて都市中心部や主要な動線をわざわざ避けて山に分け入る謎道路。
 また、滋賀県内を中心に、交差点を右左折する地点が十箇所以上あり、何がしたいのかよく解らないことになっている。
 ハイライトは京都市北部の鞍馬の山中にある百井峠付近にある通称「百井別れ」。 ここでは片側1車線の道を直進すると府道に入ってしまい、国道をたどるにはコンパクトカーでなくては切り替え不可欠と言われる鋭角に接続しているクソ狭い道を、下に落ちていかなければならない。


 

 

 

 
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