関連項目:嫌儲板 

嫌儲

 2012/2/29更新  

 嫌儲とは、ネットコミュニティで共有されているネタを用いて金儲けを行うことを嫌悪するネット上の傾向のこと。
 主に2ちゃんねるのまとめブログに対するアンチを指す。 このような嫌儲的発想を持つ者は少なからずおり、しばしば炎上を起こすこともある。

 読み方は特に決まっておらず、「けんもう」「けんちょ」「いやもう」「いやんちょ」など人によって様々。 2ちゃんねるのニュース速報(嫌儲)板では「けんもう」という呼び方が多いようである。

 ネット上には、2ちゃんねるの面白いスレを編集・転載するまとめブログが多くある。 多くの閲覧者を集めるトップクラスのブログは、アフィリエイトやアドセンスによって月に数十万円とも言われる金銭を稼いでいると言われる。
 しかし、これらのスレの内容は2ちゃんねるユーザーの一人ひとりによって書きこまれたものでありまとめブログ管理人の創作物ではなく「他人の褌を用いて相撲を取っている」ことから、攻撃的なアンチから若干の不信に至るまで形は人によって様々なれど、少なくない量の2ちゃんねるユーザーが反感を抱いている。

 この言葉の発祥も、そのような反感が基になって2006年に起きたいわゆる「VIPブログ騒動」とされている。 この騒動は、2ちゃんねる・VIP板のまとめブログ管理人が雑誌のインタビューに対し「最近のVIPは面白くない」などと発言したことをきっかけにこれらのブログが大炎上をおこし(2ch)、いくつかが閉鎖に至ったというもの。 騒動前にはそこまで攻撃的なアンチは多くはなかったが、発言をきっかけとして弱い不信といった程度の者までVIPPERが団結し「反まとめブログ」が大きく盛り上がった。
 「嫌儲」の語は、この時期にこの騒動を観察していたあるブログの管理人がこの「アンチまとめブログ」のムーブメントについて「嫌韓」になぞらえて名付けてみたのが最初らしい(当該エントリー)。

 その後、現代用語の基礎知識に載ったり2ちゃんねるに「嫌儲板」ができたこともあって、「嫌儲」という言葉が定着したようである。

わりとありがちな傾向?

 まとめブログのみならずネット上には、二次創作によって金儲けをすることに対する根強い反感感情がある。 例えば、コミケにおいて二次創作同人誌で金儲けをするサークルは「同人ゴロ」と呼ばれたり、ニコニコ動画でも動画作者や「歌ってみた」などの作者がプロデビューに至ることに対する蔑視的な反応が見られることがあった。

 これらの発想の根底には、先述したように「他人の褌で相撲を取る」ことに対する批判あるいは「楽をして稼ぎやがって」とか「同じコミュニティのユーザーなのに自分だけ抜け駆けしやがって」という妬みに由来すると思われる。 自分の書き込み以外のものについても文句を言っていることは、単に自分の権利を主張するためのものでないことを裏付けている。
 このような発想は、コミュニティのムラ社会的意識からくる「出る杭を打つ」ような意識なのではないだろうか。 あるいは、「道徳的に許されないこと」を自分が守っている、という正義感に基づく意識なのかもしれない。
 これらのいずれかはともかく、このような嫌儲的発想というのはネット上のみならず日本の一般社会においても程度の差はあれど普遍的にある心理なのではないだろうか?

 なお、マスコミにおいては「なんでもかんでも儲けることを嫌う」という趣旨で報じられることがあるが、あくまで「ネットで共有的に扱われている」ものが中心と見るべきだと思われる。

2ちゃんねらーには言う資格がない? 

 もちろん普遍的にあるとしてもその一般的な妥当性というのはまた別の話なのだが、2ちゃんねるの嫌儲的思考に対しては2ちゃんねるの特徴から来るさらに2つの反論の可能性がある。

 まず第一に、2ちゃんねるでブラウザからレスの書き込みをする際には、ユーザーが自信の著作権について無償譲渡することを約束する旨の警告文が表示される。 
 この警告文が契約として法的効力があるのかどうかは大いに議論の余地があるが、仮に効力があるとすると他人のレスはもちろん自分のレスについても文句を言うべきは2ちゃんねる運営であり、文句を言う資格が無いことになる。

投稿確認
・投稿者は、投稿に関して発生する責任が全て投稿者に帰すことを承諾します。
・投稿者は、話題と無関係な広告の投稿に関して、相応の費用を支払うことを承諾します
投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権、(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利も含む)その他の権利につき(第三者に対して再許諾する権利を含みます。)、掲示板運営者に対し、無償で譲渡することを承諾します。ただし、投稿が別に定める削除ガイドラインに該当する場合、投稿に関する知的財産権その他の権利、義務は一定期間投稿者に留保されます。
・掲示板運営者は、投稿者に対して日本国内外において無償で非独占的に複製、公衆送信、頒布及び翻訳する権利を投稿者に許諾します。また、投稿者は掲示板運営者が指定する第三者に対して、一切の権利(第三者に対して再許諾する権利を含みます)を許諾しないことを承諾します。
・投稿者は、掲示板運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を一切行使しないことを承諾します。

 第二に、2ちゃんねるならずネットコミュニティには、他者の権利を侵害して楽しむということが恒常的に行われている。 たとえば、アニメキャラのAAが作られ、テレビや雑誌のキャプ画像がうpされ、違法な動画や漫画の配信といった具合に。 むしろこのような行為はネットコミュニティを支えている大黒柱のひとつとすら言える。

 もっとも皮肉なのが2ちゃん・嫌儲板の存在で、自分たちのスレの転載は禁止しているがそもそもそのスレのニュースソースは新聞社のニュースサイト等からの転載である。 スレッドへの引用は論評のための引用としてスレからまとめブログへの引用とは性質が異なるという可能性もあるが、ニュースソースなどを嫌儲板からニュース速報板へ転載しても同じように言っている人についてはその抗弁も成り立たないといえる。

 

 

 このように考えていくと、嫌儲という感情は日本人にかなり普遍的に存在する素朴な感情ということができる。 しかし、感情のままの行動には「大きなお世話」あるいは「お前がいうな」というツッコミどころを抱えることになるという可能性があり、実際ネット上での嫌儲は残念ながらそういう状態にあるということになってしまうのではないだろうか。

 


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